ジョン・イエーツ
1825〜30年
ティー・カップ:H=55mm、D=100mm/ソーサー:D=151mm
 「オークとヤドリギのシェイプ」といい、イエーツ窯を代表する特徴的な形状によるティー・カップである。
 地色のピンクは白抜きが施され、金彩でケシやサクラソウ、アネモネなどの花が豪華に描かれている。このような地色の白抜き・金彩による多種の花絵のデザインは、19世紀の英国製磁器では珍しい。色絵では花束が多色のエナメルで描かれている。
 









ジョン・イエーツ
1820〜25年
ティー・カップ:H=48mm、D=96mm/ソーサー:D=148mm
 イエーツ窯が作ったオールド・イングリッシュ・ハンドル付き縦縞の緩いフルート型カップは、紺地とクリーム地に塗り分けられた様々なパターンに色絵を組み合わせたデザインで製造された。またカップ外側に描かれた金彩のみの装飾が、単なる線文様ではなく、大きな花葉の繋ぎとなっている点が、同窯製品の特徴として注目される。
 本品は紺地で花瓶様の図案を描き、その上に洋梨、無花果、桃、葡萄などの果物と花を取り合わせた色絵が豪華にあしらわれている。塗り分け地部分には金彩で、コルヌコピア(豊饒の角)とそこからこぼれ出る花二輪(クリーム色抜き・紺色抜き)と金彩の葉が描かれている。
 1830年代の英国磁器製品では、フルーツ絵は高級でハイコストな絵柄として扱われ、これを描くテクニックを持った絵付け師は、各窯で重宝がられた。本品の果物絵の出来映えには、いま一つ達せざる部分があるが、イエーツ窯のような中小規模の窯業者の製品にも、ダービー、ミントン、スポード式の高度な色絵に追い付こうと試みた、このような作例があったということを示す資料として、貴重である。
 本品にはコーヒー・カップが添っており、トリオのセットになっている。
 







ジョン・イエーツ
1820〜35年
ティー・カップ:H=46mm、D=97mm/ソーサー:D=147mm
 本品は紺地とクリーム地に塗り分けられた地文様に、金彩で格子文、鱗文、S字クロールの枠取りなどを配した古典的な装飾図文が描かれている。染付紺地の内側には、白抜きで葉文様があしらわれている。
 金彩で構成されたCスクロールが台を作り、そこにアルカイックな花瓶が乗せられている。花瓶からはこぼれ落ちんばかりの様々な花が、多色で賑やかに描かれている。カップはオールド・イングリッシュ・ハンドル付き縦縞の緩いフルート型シェイプで、外周にはCスクロールの組み合わせと葉文様による複雑な金彩ボーダーが描かれている。
 本品にはコーヒー・カップが添っており、トリオのセットになっている。
 






ジョン・イエーツ
1820〜25年
ティー・カップ:H=50mm、D=96mm/ソーサー:D=146mm
 やや小振りに作られたエトラスカン・シェイプのカップ&ソーサーで、角に尖りがある数字の7型ハンドルが付けられている。これは「ヘアピン・ハンドル」もしくは「アンギュラー(三角)ハンドル」と呼ばれるもののヴァリエーションである。
 類似した形状のカップ&ソーサーは、1820年代の英国で多く製造されたが、本品の花絵に見られる主花2、副花1の花の種類と色の組み合わせが、イエーツ窯で使用されたパターンと一致しているため、形状と合わせて絵柄からも見分けることができる。
 金彩では藍地の上にスプレイ・リーフ繋ぎとドット文、色絵の間に葡萄蔓、中央に八角形のコーミング(櫛形)枠が施され、薔薇の一輪花がエナメルで描かれている。
 






ジョン・イエーツ
1820〜25年
ティー・ボウル:H=50m、D=93mm/ソーサー:D=137mm
 本品のシェイプはロンドン・シェイプとスポード社のベル・シェイプから派生した形状で、カップの胴に横線の段差が作られたベル・シェイプのヴァリエーションと、上端が非常に太く、先端が極端にカールした上に、やや傾いた羽造形があしらわれたロンドン・ハンドルのヴァリエーションが特徴である。ジェフリー・バーンズ博士とアルマ夫人によって「ロンドン・ベル・シェイプ」と名付けられている。
 絵柄は典型的な伊万里アレンジ文様で、椿を用いた絵柄に、花菖蒲とそれを誤解したアイビー状の葉が染付で描かれている。全体に豪華な金彩が施されている。
 






ジョン・イエーツ
1820〜35年
コーヒー・カップ:H=63mm、D=80mm/ソーサー:D=142mm
 ピンクとクリーム・イエローの二色の地に、金彩で小花が描かれたフランス風の作品である。地色一〜二色に金彩のみというデザインは、パリ窯業群とその影響を受けたロンドンの絵付け専門工房で多く作られたが、英国の伝統窯業者としてはウースター窯が好んでこのタイプの製品を量産した。「ヨーロッパ アンティーク・カップ銘鑑」p.126〜7に掲載したフライト、バー&バー、ウースターの三作品は、全てフランス由来の装飾デザインで仕上げられている。
 本品もこれらと同時期に製作されたもので、イエーツ窯は1820〜35年までの十五年間しか磁器製品を作らなかったが、こうした意匠は磁器製造のキャリアの前半に現れる。
 大陸風の円形装飾が付いたユニークなハンドルを持つこのカップのシェイプは、「オーク&ミッスルトゥ」という。この呼称は一般的なものではなく、イエーツ窯の一連の作品にのみ用いられるものである。名称は、口縁部外側にあるガドルーン内のレリーフ(エンボス)装飾の一部が、ヤドリギ(ミッスルトゥ)の種子の図柄を中心に、左右にオークの葉をあしらったものであることに由来する。
 黄色地には白抜きに金彩で、セーヴル窯起源の「イワシャコの目(ウーイ・ド・ペルドリ)」の図柄が用いられている。
 同じシェイプのティーカップが「アンティーク・カップ&ソウサー」p.63に掲載してあるので、ご参照いただきたい。
 






ジョン・イエーツ
1820〜35年
ティー・カップ:H=44mm、D=97mm/ソーサー:D=147mm
 ジョン・イエーツの工場はスタッフォードシャー窯業群に属し、1784年頃からシェルトンに窯を建設して、アーザンウエアやバサールトといったウエッジウッド系統の陶器を焼き始めた。1820年頃にはボーンチャイナの焼成に成功したが、その後十五年程で事業は衰退し、1835年に閉窯した。
 イエーツの磁器製品は明瞭な発色のエナメルで、1820年頃にロンドンの高級絵付け工房で描かれていた華美な様式を写した作品から、アンピール様式の地色・金彩装飾を用いた清楚なフランス趣味の作品や、伊万里アレンジの英国ならではのユニークな作品まで、短い製造期間に多様なデザインの作例を残した。しかし今日、この窯のテーブルウエアを市場で見つけることは難しい。
 この作品はボーンチャイナ製で、上質な釉薬がかけられている。形状はオールド・イングリッシュ・ハンドル付きのフルート型で、本体碗部の外周には緩やかな山・谷の隆起が造形されている。
 藍地に鋸歯文と金彩があしらわれ、白抜きしたパネル内には、花絵が地面を含めて描かれている。こうして地面から生えている花を描くのは、セーヴル窯第一ロココ装飾第二期(18世紀末期)に流行した様式を写したスタイルである。
 

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