ウースター ドクター・ウォール期
1770年頃 染付手書きでCの窯印
ティー・カップ:H=50mm、D=84mm/ソーサー:D=122mm
 ドクター・ウォール期の1760〜70年代にかけて製造されたティー・カップは、本品のようにハンドルが比較的小振りな造型が特徴である。またソーサーもカップに比して小さめである。
 ここでは有田の柿右衛門窯の赤絵をかなり忠実に写した日本磁器風の絵柄が描かれており、このような製品群を「リッチ・カキエモン・パターンのグループ」と呼ぶ。染付で丁寧に鳥の胸羽文様(鱗文様ともいう)が施された地に白抜きの窓を開け、その各所に柿右衛門風の草花図が描かれている。この染付白抜きは定型図柄で、「アジャテイテッド・バード(ファンシー・バード)」などの色絵付けにも共通して使用された。
 磁胎はソープロック(凍石)を含んだ「ステアタイト磁器」で、透過光は若草色である。金彩は蜂蜜で金粉を練って絵付けする「ハニー・ギルディング」で仕上げられている。
 






ウースター ドクター・ウォール期
1775年頃 染め付け手書きで「W」の窯印
ティーカップ:H=48mm、D=82mm/ソーサー:D=136mm
 英国南西部の港町ブリストルに、1748〜49年頃にベンジャミン・ルンドが開設した窯があった。ルンズ(Lund's)・ブリストル(前期ブリストル窯)という。この窯では材土にステアタイトという鉱物(ソープストーン=凍石)を混ぜて焼く「ステアタイト磁器」を作ったが、この技術に注目した医師ジョン・ウォールと友人の薬剤師ウィリアム・デイヴィスは、他十三名の株主を募ってルンズ・ブリストルを買収し、1751年、ソースの名前で知られるウースターの地に移転して工場を建設し、翌1752年からステアタイト磁器の製造を始めた。
 ウースター窯の絵付けの作風は中国磁器の写しに始まり、間もなく伊万里・柿右衛門の写しも完成した。ややあってマイセンやセーヴルなど大陸磁器のコピー作品も現れた。
 この作品はセーヴル窯の影響下にあるコピー品で、英国でいわゆる「ホップ・トレリス・パターン」と通称されている多数のヴァリエーション(「アンティーク・カップ&ソウサー」p.40参照)の中の一つである。
 空色の顔料に真珠の連文、緑の葉に赤い実の絵柄の部分など、絵柄はセーヴル由来のもので、形状はウースターならではの耳型キックト・ハンドル付きのヴァーティカル・フルート型ティーカップである。
 

 

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