ルートヴィヒスブルク
1770〜90年 手書きの染付で鹿の角を模した窯印
ティー・カップ:H=47mm、D=74mm/ソーサー:D=135mm
 ヴュルッテンベルク公爵家の盾の紋章の一部に使われる、三本の鹿の角のデザインを引用した窯印が書かれている。釉薬は透明だが多少飴のようで、前掲作とは質感が異なる。細かい灰降りも見られる。花絵は大味で、少々現実味に欠ける。細い縦縞が浅く付いた原型で成型されており、またスクエア・ハンドルはこのような逆台形のカップに頻繁に取りつけられたことで知られる。このハンドルは「フレンチ・ハンドル」とも呼ばれるが、ドイツ圏の各窯が多くの作例を残している。
 

 


 
ルートヴィヒスブルク
1760〜90年 手書きの染付でCCのモノグラムと王冠の窯印
ティー・カップ:H=74mm、D=49mm/ソーサー:D=132mm
 このカップは前掲の作品と同じモールドでハンドルを作り、本体には外側全面に鱗文様が造形されている。この鱗文様はルートヴィヒスブルクのテーブルウエアではよく知られるもので、現在ドイツで作られている「ルートヴィヒスブルク」(博物館収蔵品などの古いルートヴィヒスブルク窯をコピーする現代のメーカー。ルートヴィヒスブルク窯は1824年に廃窯し、現代までの継続性はない)のティー・カップにも、このデザインがみられる。
 素磁はやや厚めだが軽く、クリーム色がかって見えるのは釉薬の問題で、中の素磁自体は大変白い。ウィーンからリングラーによって伝えられた白磁の優秀性を物語る作品である。
 

 


 
ルートヴィヒスブルク
1760〜90年 手書きの染付でCCのモノグラムの窯印
ティー・カップ:H=46mm、D=74mm/ソーサー:D=137mm
 口縁に独特の細かいエンボス装飾がある。軽くて焼き締まった素磁だが、カップ、ソーサーともにかなり歪みがある。美しく強い発色のエナメルでしっかりした絵付けがされており、ソーサーのメインの花が裏から描かれているのが面白い。本品はセットで伝世しており、他のソーサーにも裏描きの花絵が施されているため、このようなデザインによる統一企画だったとみられる。
 

 

 

 


 
ルートヴィヒスブルク
1765〜75年 CCのモノグラムの窯印
コーヒーキャン:H=62mm、D=62mm/ソーサー:D=133mm

 1758年にヴュルッテンベルク公カール・オイゲンによって設立されたルートヴィヒスブルク窯は、1760年にウィーン窯出身のアルカニスト(製磁最終奥義修得者)、ヨーゼフ・ヤーコプ・リングラーを招いて硬質白磁の焼成に成功した。この後リングラーは他窯に移動せず、ここを安住の地と定めて残りの生涯をルートヴィヒスブルクで過ごした。(「アンティーク・カップ&ソウサー」p.233参照)
 本品の釉薬はクリーム色がかり、磁胎にはほとんど透光性がない。釉薬は滑らかだが、ペッパー状の微細な灰降りが見られるのが特徴である。
 本品はマイセン窯の絵柄のコピーで、柴柵にインド風の生命花が紫と金彩で描かれている(→「コラム6」参照)。
 ルートヴィヒスブルク窯としての見どころが現れているのは造形の面であり、まず目につくのは特異なハンドル形状である。このタイプは「ロココ・モールド」の系統に属するフランス由来のもので、「ブロークン・ループ・ハンドル」の源流を示す資料である。三つの部分からなる後年のブロークン・ループが、ロココのCスクロールの組合わせから発達したことがわかる。英国では二番目のCが最初のCの上に接する形状が多く作られたが、本品では下につく造形となっている。
 また食器本体には細かい線状文(フルート装飾)が浅く地文化されており、この装飾はルートヴィヒスブルク窯によく見られるものである。しかし実は、これもマイセン窯の装飾のコピーであり、マイセンの柴柵図製品にも筋入りのモールドが使用されるのが通例である。

 

<
当サイトに掲載の写真、文章等の無断転載・転用は堅くお断りします。
Copyright (C) 1999 mandarin d'argent, LTD. All rights reserved