チャールズ・ボーン
1815〜25年
コーヒー・カップ:H=69mm、D=76mm/ソーサー:D=147mm
 滑らかで艶のある釉薬を持つ優れたボーンチャイナに、染付紺地で白抜きのパネルを作り、その中に一輪(一本)描きで鮮やかな色彩の花が描かれている。白抜き枠の四方にはクリーム色で円文様とピンクのエナメルで薔薇が描かれている。この独特の枠デザインはチャールズ・ボーン窯製品の目印とも言えるユニークなものである。全く同様の枠デザインで、クリーム地円文様の部分をマーガレットの花のような金彩文様で描いた作品が、「アンティーク・カップ&ソウサー」p.64に掲載してあるので、ご参照頂きたい。
 カップは口縁が朝顔型に開いたフレア・タイプのロンドン・シェイプで、鋭く造形されたロンドン・ハンドルが取り付けられている。紺地の上には金彩で大きく花が描かれ、周囲には三つの点からなるドット文が散らされている。
 







チャールズ・ボーン
1815〜25年
ティー・カップ:H=60mm、D=91mm/ソーサー:D=149mm
 チャールズ・ボーンは、白く滑らかな釉薬を持つ、スポード・タイプのボーンチャイナを製造した窯業者である。スタッフォードシャー窯業群に属し、「グロヴナー・ワークス」と称した。製品としては冴えない風情の安直な量産食器も作ったが、窯の真骨頂は手描きの色絵・金彩を施した贅沢なティーウエアである。スポード風の絵柄デザインで作られた精緻な飾り壺や、風景画を描いた豪華なディナー皿、動物像などもあるが、作例は稀で、この会社は紅茶・コーヒー用の磁器の製作に主眼を置いていた。とはいえ現在、チャールズ・ボーン製の上等なティーカップを博物館以外で見つけることは容易ではない。
 創業者のチャールズ・ボーンは、1807年頃から陶器を焼き始め、磁器製造に着手したのは1815年頃とされる。なお磁器製品は1817年頃から現れるという説もある。十三年後の1830年に、チャールズ・ボーンが病気で引退するとの触れ込みで閉窯セールを開催したが、その時点で工場敷地は二万平米(六千坪)以上あり、素焼き用に三基、仕上げ用にも三基の窯があった。これほどの資産と設備を誇る優良事業の経営を引き継ぐ者が、なぜ誰も名乗り出なかったのか、その理由はいまだに不明である。チャールズ・ボーンが富裕で、経済的に逼迫していなかったか、いずれは生産を再開する希望があったなどと推測される。したがって工場や窯は売却されるわけでもなく、そのまま廃絶した。

 この作品は染付による藍地に金彩で「ヴァーミキュレイト」という虫喰い(虫這い)文様があしらわれ、白抜きされた楕円パネル内に薔薇の花絵が描かれている。ヴァーミキュレイト(ヴァーミキュレイション)は、セーヴル窯で多用されたフランス由来の地文様「ヴェルミキュール(ヴェルミキュラシオン=虫喰い文)」を模倣したものである。これを「ヴァーミセリ(ヴァーミチェリ)」とだけ書くと、素麺程度の細いパスタの英語名(イタリア語でヴェルミチェッリ)となり、装飾工芸とは関係ない料理用語になってしまう。必ず「ヴァーミセリ・ギルディング」と表現しなければならない。
 形状はロンドン・シェイプで、同じシェイプで少し小振りのティーカップが、「アンティーク・カップ&ソウサー」p.64に掲載してあるので、ご参照いただきたい。
 

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